皆様のご不安を少しでも軽減できるように、新型コロナ感染症について Q&A を緊急掲載いたします。本情報についてのお問い合わせは欧州日本人医師会ではお受けしておりません。

新型コロナウイルスに関する情報は日々世界中で更新されています。実際に、医療現場では次々に出てくる最新情報に基づいて診療を行っています。昨日まで正しいと思っていたことが、明日には間違いだということもあり得ますし、またその逆も然り。今現在わかっている範囲でお答えします。

Q1. 新型コロナウイルスは空気感染しますか?
Q2. 咳やくしゃみ以外からも感染しますか?
Q3. 「ソーシャル ディスタンス」とは、具体的にどういうことですか?
Q4.
オフィスでの勤務について、エアコンがきいた社内で感染予防に気を付けられることはありますか?
Q5.
まだ通勤している身ですが、帰宅すると妊婦の妻と小さな子供がいます。ウイルスを持って帰らないために特に気を付けるべきことはありますか?
Q6.
夏に気温・湿度が上がる地域に住んでいます。いざ夏が来たらウイルスの猛威は収まりますか?
Q7.
手作りマスク、新型コロナウイルスに対して効用はありますか?
Q8.
新型コロナウイルス感染のリスクが高い今、特に摂るべきではない(もしくは摂取中で気をつけるべき)薬などありますか?
Q9.
治療法はありますか?
Q10. 一人家にこもってばかりで、精神的に大変辛く感じています。何かアドバイスをいただけませんか?


Q1.
新型コロナウイルスは空気感染しますか?
新型コロナウイルスによる感染は、主に咳やくしゃみなどによる飛沫感染、また接触感染であると考えられています。
咳やくしゃみをすると微小な水滴が飛び散りますが、この飛沫粒子に病気の原因となる細菌やウイルスなどが含まれる場合、それを吸い込むことによって感染するのが飛沫感染です。飛沫粒子は水分を含むため大きく、また重さもあるため、12mほどの範囲にしか拡散せず、また直ぐに地面に落ちます。 そして、この飛沫粒子に汚染された物や人を介して感染するのが接触感染です。ウイルスは他の生物の細胞の中に入り込まなければ増えることはできませんが、放出された飛沫粒子中の新型コロナウイルスは、物や人に付着してからもしばらくの間、生き残ることがわかっています。
ところで、飛沫粒子の水分が蒸発し、残りの核の部分を吸い込むことによって感染するのが空気感染です。飛沫核は水分を含まないため小さく、また軽いため、長時間空気中を浮遊し広範囲に拡散します。
医療現場では、気管挿管などの処置をする際に大量のエアロゾルを発生するリスクがあり、空気中に含まれている微小な液体または固体の粒子であるエアロゾルは飛沫核のようにウイルスを含んだまま空気中を浮遊するため、特殊な状況下でのみ空気感染の対策を行っています。しかしながら、喘息発作時のネブライザーによる吸入療法などの一部の特別な場合を除き、一般的な日常生活を送るうえでは空気感染のリスクはありません。

Q2. 咳やくしゃみ以外からも感染しますか?
 はい、ウイルスは便からも大量に検出されており、よって感染者の便からも感染し得ます。特に今回の新型コロナウイルスの特徴として下痢などの消化器症状が多いことがわかっています。血液、尿、汗、涙などの他の体液からの感染リスクはとても低いと考えられています。
 感染者の体液で汚れた衣類を洗濯する際、非感染者の洗濯物と分ける必要はありませんし、洗剤は普段使用されている家庭用洗剤で十分です。洗濯前の衣類を触った直後の手洗いを忘れずに行ってください。

Q3. 「ソーシャル ディスタンス」とは、具体的にどういうことですか?
感染を防ぐためには感染者との接触を避ける必要がありますが、そのために人と物理的な距離を保つことをソーシャルディスタンスといいます。
一般的に感染者との接触が密接であり長いほど、また感染者の症状が重症であるほど、吸い込むウイルスの数が増え感染リスクが上がります。しかし、感染しているにもかかわらず全く症状が無いこともあり、その場合、本人も知らないうちに感染源となり得ます。
そうした事態を避けるため、具体的には、不必要な外出を避ける、どうしても必要な場合は人混みを避ける、人とは1m以上の距離を取る(飛沫粒子の拡散範囲)、握手やハグなどの挨拶は避ける、買い物時は不必要な物には極力触らない(接触感染に注意)などが挙げられます。多くの国で休校措置を取ったり、在宅勤務を推奨したり、また外出禁止令が出されているのは、ソーシャルディスタンスを徹底し、感染拡大を防ぐためです。

Q4.
オフィスでの勤務について、エアコンがきいた社内で感染予防に気を付けられることはありますか?
密閉空間で換気が悪い場所は感染のリスクを高めます。室内の空気を循環させるだけでは不十分です。
窓がある部屋であれば通常の換気を行いましょう。可能であればエアコンの換気システムや外気導入量などを見直すことも有効と思われます。
しかし最も大事なのは標準感染予防策です。具体的には先程のソーシャルディスタンスに加え、
 症状がある場合は仕事を休む
 症状がある場合、もしくは症状がある人と接触する場合はマスクを着用する
 咳やくしゃみをする時は口を覆い、直後に手を洗う
 使用済みのティッシュは捨て、ゴミは密閉して捨てる、直後に手を洗う
 石けんでの手洗いや手指のアルコール消毒をこまめにする
 ドアの取っ手やエレベーターのボタンなどの共用部分をはじめ、デスクやパソコン、スマホなどの個人使用の物も可能であれば清掃・消毒する
ことなどが重要です。

Q5.
まだ通勤している身ですが、帰宅すると妊婦の妻と小さな子供がいます。ウイルスを持って帰らないために特に気を付けるべきことはありますか?
上で述べた標準感染予防策の徹底です。

Q6.
夏に気温・湿度が上がる地域に住んでいます。いざ夏が来たらウイルスの猛威は収まりますか?
わかりません。
夏が来たら勢いは収まるかもしれませんが、また冬が来たら再び猛威を振るうかもしれません。中近東、アフリカ、東南アジアや南アメリカなど、今現在、高温、多湿もしくは乾燥している地域でも流行が始まっていますので、おそらく季節性は無いであろうと思われます。

Q7.
手作りマスク、新型コロナウイルスに対して効用はありますか?
医療用マスクには規格基準があり、微生物や微粒子の補集、濾過の効率などによって異なる種類があります。医療現場では飛沫感染や空気感染など微生物の感染経路によってマスクの種類を選択しています。
 手作りマスクはこの規格基準から外れますので、新型コロナウイルスを予防するという意味での効果は、当初は低いと思われていました。しかし最近では、感染症の専門家の間でも、手作りでもマスクがあるに越したことはないと考えられるようになってきました。
 ただ、マスクの効果を過信し、手洗いをはじめとした標準感染予防策をおろそかにすることがないようくれぐれも注意してください。

Q8.
 新型コロナウイルス感染のリスクが高い今、特に摂るべきではない(もしくは摂取中で気をつけるべき)薬などありますか?
 
フランスでは一般的に感染症が疑われる場合、抗炎症薬の摂取は控えられています。炎症作用は感染症に対する身体の防御反応ですので、それを抑える薬の摂取は感染症を悪化させると考えられているからです。ただ、この見解は今のところ世界的に認められているわけではありません。 慢性疾患で抗炎症剤を内服している場合は、個人の判断で服薬を中止せず、必ず主治医の指示を仰いでください。
 
また、抗癌剤を投与されたり免疫抑制剤などの薬を普段から内服している場合は、一般的に感染症リスクが高まりますので、更に予防策を徹底してください。 

Q9.
治療法はありますか?
今現在、新型コロナウイルスに有効な治療法は確立していません。様々な種類の薬が臨床実験で試されていますが、結論が出るにはまだ時間がかかると思われます。

Q10. 一人家にこもってばかりで、精神的に大変辛く感じています。何かアドバイスをいただけませんか?
外出制限中のメンタルヘルスですが、一般論的な回答としてはYahooニュースの記事、「閉じこもり 宇宙飛行士の助言」、
https://www.afpbb.com/articles/-/3275588
が大変参考になりますので、ぜひ御一読下さい。ここでは「不安」に的を絞ってお答えします。このような状況では、ウィルス感染への不安がストレスの基盤になり、うつの起点にもなります。不安の機序を解析すれば、いわゆるプラス思考・マイナス思考という思考パターンの差異に行きつきます。「考え過ぎ」という表現がよく使われますが、これは「熟考」とは意味合いを異にし、むしろ「くよくよする」ことであり、論理的に「考えること」とは別モノです。この「くよくよ」が不安を生み出す土壌であり、マイナス思考がその背景にあります。「一人家にこもってばかりで、精神的に大変辛く感じる」場合、「くよくよしている」ことが自覚されていません。このため、まずは、自分が「考えている」のか、「くよくよしている」のか、気付く必要があります。「くよくよしている」ことが自覚できれば、宇宙飛行士の助言がすんなり頭に入って来るでしょう。

回答医師
Q1
Q9 山田ヴォルフ佳奈 フランス 感染症科
Q10
太田博昭 フランス 精神科

4月30日 改訂